ー 和文書体「クワドラ」ー



はじめに

この書体名は「テキストゥーラ・クワドラータ」という
中世ヨーロッパの手書き文字から名付けた。
これは当時教会の書物に多く使われた書体の様式であり、
このスタイルの和文フォントで文章を組むと
今までにない紙面になるのではないかと考えたのだ。

デザインのイメージは漠然とあったので、
カリグラフィで使う幅広のペンで
書いていけばいいだろうと
初めは単純に思っていたが、
いざペンを持つとなかなか思うようにいかないもので、
特にひらがなの丸みをどんな表情にするか
形がまとまらないでいた。
それでもペンを持って線をコントロールしながら
書き込んでいくうちにカーブやコーナーなどが
最初の頃よりは楽になり、
ようやく今までぼんやりとしていたイメージが
形になり紙面に固定させることが出来た。

文字のウエイトは最初からグロテスクなくらい
太くしようと決めていた。
その太さの基準となる文字をいくつか作り、
次に短い文章に組んだ時の雰囲気を見ると
求めていたテクスチャになったので、
いよいよ指定された1000文字に展開することにした。


製作開始

私のデザインの方法は鉛筆で文字を
スケッチするところから始まるが、
今回の書体スケッチは〆切りが近づいていたので
(12ヶ月後!)
特太ゴシック体をベースにして、
その上にデザインをしていく方法を取る。

A4サイズに50ポイント(約1.7cm)で
出力した規定文字の上にトレペをのせスケッチをして、
それが終わったら拡大、
徐々に細かな部分を詰めながら
再度トレースをして原字を作る。
スケッチが終ったら原字をスキャンし、
パソコンに取り込みIllustratorのペンツールで
デジタル化してゆく。
作業が進み文字数が増えてくると、
始めに作ったものと太さが違ってくるので
常に最初作った基準文字と見比べながら
データ化を進めていった。
そして一通りデータ化が済んだら全ての文字を出力し、
形や全体の黒み、重心の位置などをチェックし、
修正しては出力を繰り返して書体の精度を上げて行く。

今回の「FONT1000」※では、
「インストールしてパソコンで使えるようにする」
ところまで制作者が作るので、
字形のデータ化が済んだらフォント制作ソフトを使い
字形データをひと文字ひと文字専用ソフトの
決められたボックスに配置する作業を施す。
この作業で入れる場所を間違えると、
キーボードで打っても正しい文字が出てこなくなるので
慎重さを必要とする。
その後いくつかの操作が終わると漸く見慣れた
フォントのスーツケースが現れた。
これをインストールしてキーボードを叩くと
自分の文字がモニター上に現われる、
そのときの気持は今までの作業時間の事を考えると
あっけないくらいだった。

制作第二段階へ

ところが話はこれで終わらなかった。
字形データ制作中にミスがあったようで
縦線と横線が交差する所に
水カキのような形状が出現することが出力してわかった。
それも一つや二つではないようで、
モニター上になくても印刷されるとできるものもあり、
原因も分からないまま修正をするか、
それとも書き直すかどうしたものか考え込んでしまった。

そんな時に「FONT1000」より新しい提案が届いた。
内容は文字数を2200文字に増やし
Illustratorで作った字形データの提出でよいとの事。
これなら文字の使用範囲も広がると考え、
自力でのフォント化から方向転換して、
改めて不足文字のスケッチとデータ化の作業に戻り、
なんとか締切りに間に合わせることが出来た。
そして、試作版が届き最終的な全体の修正を行い、
クワドラの作業は終了した。
長いようで短い一年だったが、
多くの人にクワドラが使われてほしいと願っている。

※FONT1000 オリジナルフォント制作のプロジェクト
http://www.font1000.com/

 

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